がん性疼痛に対する治療として、1986年に世界保健機構(WHO)が、がん疼痛治療法を公表してから四半世紀が経過し、日本においても徐々に一般的なものとなりつつあります。我が国の、がん対策基本法案でも緩和ケアや疼痛治療の重要性が強調されています。しかしながら、依然として緩和医療の専門医の数は限られているのが現状です。
一般的にがんという病気は「痛みがつらい病気」と考えられているように、がんの進行や治療に伴い60~75%の患者さんが痛みを経験します。これら報告されている痛みのすべてが、がんの病変によっておこるわけではありません。70%近くはがん自体が内臓・骨・神経を圧迫したり傷つけたりすることによって生じます。しかし残りの30%はがんに対する手術や抗がん剤治療の副作用・放射線治療に伴う痛みです。
がんの痛みに対する治療が必要な理由
- 痛みがあると睡眠が十分にとれなくなったり、食欲がなくなる原因となり、結果的に治療意欲が低下したり、元気がなくなり十分な治療を受けられなくなることにも結び付きます。したがって、積極的ながん治療を行っている患者さんであっても痛みの治療を優先して十分に行う必要があります。
身体的な要因による痛みの分類
- 腫瘍やがんが原因となった痛み
- 骨への浸潤・内臓への転移・軟部組織への浸潤・
- 神経の圧迫・神経の破壊・
- 消化管の攣縮・頭蓋内圧の亢進・リンパ浮腫など
- がん治療に起因した痛み
- 手術後
- 抗がん剤治療後
- 放射線治療後
- がんの進行(全身衰弱)に関連した痛み
- 便秘によるお腹の痛み
- 床ずれによる痛み
- 直腸の痙攣
患者さんへのお願い
- 身体でも心でも痛みがあるときには早めに担当医に症状を伝えることが重要です。痛みとは「患者さんが”痛い”ということ」そのままであり、主観的な感覚です。客観的に評価することはできません。したがって、患者さんが「痛い」と表現していただかなければ診断そして治療が進みません。
- 身体の痛みの強さは、心の痛みによって強くなることも、弱くなることもあります。患者さんの気分、さらには痛みの意味などが痛みの感じ方、そして痛み止めの治療に大きく影響します。
当院では、医師・看護師が共同してがん患者さんに対する疼痛緩和療法を外来診療・在宅診療で行っております。詳細についてはスタッフまでお問い合わせください。